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CASE ── 業種別モデルケース|金属加工(精密板金)

精密板金の粗利が漏れる3つの場所 ── 年商8.4億円・試作から量産までの会社のモデルケース

公開 2026-10-30 | 執筆 大越 隆行

※本記事のケースは、金属加工(精密板金)の中小企業でよく見られる状況をもとに構成したモデルケースです。特定の企業の事例ではなく、数値は説明のための例です。

この記事の要点
  1. 精密板金で粗利が漏れやすいのは、①試作・小ロット品の段取り時間、②材料高のあとも据え置かれた単価、③外注の曲げ・溶接・塗装費の3か所です。
  2. 見積が「材料費×係数」だと、段取りに時間がかかる小ロット品ほど赤字になり、忙しいのに利益が残らない状態になります。
  3. 品番別の実原価を出して値上げの順番を決めると、年商8.4億円規模で粗利率3ポイント、年間約2,678万円の改善余地があります。

モデルケースの会社

業種金属加工(精密板金)
年商8.37億円
従業員47名
主な取引先産業機械・医療機器メーカー(約58社)

起きていたこと

試作から量産まで一貫で受けられることが強みで、受注は堅調。ところが、ここ3年で材料(SPCC・ステンレス)や電気代が上がり、粗利率は24%台から21%まで下がっていました。社長は「忙しさは変わらないのに、決算のたびに利益が減る」と感じていますが、どの仕事が儲かっていないのかは分かっていません。

診断で見えた「粗利の漏れ」

試作・小ロット品の段取り時間が見積に入っていない

プログラム作成、ブランク・曲げの段取り替えに1件あたり1〜2時間かかる一方、見積は材料費×係数。数量10個以下の品番の多くが、実原価では赤字でした。

主要取引先の単価が3年据え置き

売上上位10社のうち4社は、材料高の前から単価改定がありません。この4社で売上の約4割を占めています。

外注工程の値上がりを吸収している

溶接・塗装・メッキの外注先はこの2年で値上げしていますが、自社の売価には反映されていませんでした。

90日の打ち手(モデル)

DAY 1〜30日

品番別の実原価を出す

直近12か月の品番別売上・数量に、材料実績・外注実績・工程時間×賃率を割り当て、赤字品番と据え置き取引先を一覧にする。

DAY 31〜60日

値上げの順番と幅を決めて交渉

据え置き期間が長く粗利率の低い取引先から順に、材料・外注・電気代の上昇を数字で示して単価改定を申し入れる。

DAY 61〜90日

小ロット品のルールを作る

最小ロット・段取り費の別建て・試作単価表を作り、見積の段階で赤字品番が生まれないようにする。

粗利率の変化(モデル)

BEFORE
21.0%
→
AFTER(想定)
24.2%
改善幅 +3.2pt / 年間の粗利増加 約2,678万円

計算:年商8.37億円 × 3.2ポイント = 約2,678万円(売上が同じと仮定した場合)。効果は企業の状況により異なります。

このケースから言えること

精密板金の会社は「何でも作れる」ことが強みであるほど、手間のかかる仕事を安く受けてしまいがちです。値上げより先に、どの品番・どの取引先で漏れているかを数字で見ることが出発点になります。

粗利ドックの1日診断では、代表が1日現場に入り、社長・工場長・経理へのヒアリング、現場観察、見積や伝票の実物レビューを経て、品番別・取引先別にどこで粗利が漏れ、どれくらい取り戻せる余地があるかをA4・8ページの診断レポートにまとめます。

ARARI DOCK ── 1日診断
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よくある質問

取引先に値上げを言うと、仕事を切られませんか?

根拠の数字を示し、順番と幅を決めて申し入れることで、応じてもらえる可能性が高まります。全社一律に同じ幅で言うのが一番失敗しやすいやり方です。

工程時間を測る仕組みがありません。

現場で主要品番の段取りと加工時間を実測し、それをもとに配賦すれば十分です。1日診断でも、主要品番を数点選んで実測します。

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執筆:大越 隆行(T&Fアセットマネジメント株式会社 代表取締役兼CEO)Amazonで世界基準のオペレーションに携わった後、プライム上場企業の構造改革推進室で値上げ交渉・事業再生・撤退・M&Aを実行。粗利ドックの診断・伴走・再建はすべて本人が現場に入ります。プロフィール