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CASE ── 業種別モデルケース|印刷

複数事業を持つ印刷会社の粗利を立て直す ── 年商15.9億円・従業員96名のモデルケース

公開 2026-10-30 | 執筆 大越 隆行

※本記事のケースは、印刷の中小企業でよく見られる状況をもとに構成したモデルケースです。特定の企業の事例ではなく、数値は説明のための例です。

この記事の要点
  1. 商業印刷とパッケージ印刷など複数の事業を持つ印刷会社では、①事業ごとの採算が分かれていないこと、②設備の稼働率の差、③大口取引先からの値引き要求に応じ続けていることが、粗利を削りやすい要因です。
  2. 会社全体の数字では、伸びている事業の利益が、縮んでいる事業の赤字を隠してしまいます。
  3. 事業別・設備別の採算を出して価格と生産体制を見直すと、年商15.9億円規模で粗利率3ポイント弱、年間約4,457万円の改善余地があります。

モデルケースの会社

業種印刷
年商15.92億円
従業員96名
主な取引先食品・日用品メーカー、広告代理店、流通(約310社)

起きていたこと

チラシなどの商業印刷と、食品・日用品のパッケージ印刷の2つの事業があります。基幹システムは入っていますが、売上と原価を事業別に分けて集計していません。商業印刷は部数の減少で機械が空く時間が増え、パッケージ印刷は大口取引先からの値引き要求が続いています。会社全体の粗利率は27%台から24.7%まで下がっていました。

診断で見えた「粗利の漏れ」

事業別の採算が分かれていない

事業ごとに数字を分けると、商業印刷の粗利率はパッケージ印刷より大幅に低く、一部の製品群は赤字でした。

印刷機の稼働率に大きな差

商業印刷の機械は稼働率が5割を切る一方、パッケージ印刷の機械は残業でまかなっていました。

大口取引先への値引き

パッケージ印刷の大口2社には、毎年の値引き要求に応じており、用紙やインキの値上がり分を吸収していました。

90日の打ち手(モデル)

DAY 1〜30日

事業別・設備別の採算を出す

売上と原価を事業別・印刷機別に分け、稼働率と時間あたりの粗利を一覧にする。

DAY 31〜60日

大口取引先と条件を見直す

用紙・インキ・人件費の上昇と事業別の採算を示し、値引きの見直しと価格改定を申し入れる。

DAY 61〜90日

設備と人の配置を組み替える

稼働率の低い機械で受けられる仕事を増やすか台数を減らし、人員を忙しい事業に振り向ける。

粗利率の変化(モデル)

BEFORE
24.7%
→
AFTER(想定)
27.5%
改善幅 +2.8pt / 年間の粗利増加 約4,457万円

計算:年商15.92億円 × 2.8ポイント = 約4,457万円(売上が同じと仮定した場合)。効果は企業の状況により異なります。

このケースから言えること

複数の事業を持つ会社ほど、事業別に数字を分けることが第一歩です。どの事業で稼ぎ、どの事業で失っているかが分かれば、交渉と設備の判断が速くなります。

粗利ドックの1日診断では、代表が1日現場に入り、社長・工場長・営業部長・経理へのヒアリング、現場観察、見積や伝票の実物レビューを経て、事業別・設備別・取引先別にどこで粗利が漏れ、どれくらい取り戻せる余地があるかをA4・8ページの診断レポートにまとめます。

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よくある質問

事業別に原価を分けるのは難しくないですか?

印刷機ごとの稼働時間と、用紙・インキの使用量で割り振れば、実務上は十分な精度で分けられます。

大口取引先との交渉で取引が減ったら困ります。

取引先別の採算を出したうえで、失えない取引先と見直すべき条件を分けて考えると、無理のない交渉ができます。

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執筆:大越 隆行(T&Fアセットマネジメント株式会社 代表取締役兼CEO)Amazonで世界基準のオペレーションに携わった後、プライム上場企業の構造改革推進室で値上げ交渉・事業再生・撤退・M&Aを実行。粗利ドックの診断・伴走・再建はすべて本人が現場に入ります。プロフィール