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CASE ── 業種別モデルケース|印刷

印刷会社の粗利を削る外注と特急対応 ── 年商8.7億円・従業員54名のモデルケース

公開 2026-10-30 | 執筆 大越 隆行

※本記事のケースは、印刷の中小企業でよく見られる状況をもとに構成したモデルケースです。特定の企業の事例ではなく、数値は説明のための例です。

この記事の要点
  1. 社員50名前後の印刷会社では、①製本・加工などの外注費の値上がりを転嫁できていないこと、②特急・夜間対応を無償で引き受けていること、③営業担当ごとに値決めがばらばらなことで、粗利が漏れやすくなります。
  2. 外注の加工費は案件ごとに金額が小さく、見積に反映されないまま積み重なります。
  3. 案件の種類別に外注費と作業時間を出して料金を見直すと、年商8.7億円規模で粗利率3ポイント強、年間約2,864万円の改善余地があります。

モデルケースの会社

業種印刷
年商8.68億円
従業員54名
主な取引先企業・広告代理店・自治体・出版社(約230社)

起きていたこと

商業印刷に加え、冊子や販促物の企画・製作まで手がけています。製本や特殊加工は外注先に頼んでおり、外注費はこの数年で上がりましたが、見積は営業担当がそれぞれの経験で作っていて改定が進んでいません。粗利率は29%台から25.8%まで下がっていました。

診断で見えた「粗利の漏れ」

外注加工費の値上がりが見積に入っていない

製本・箔押し・特殊加工などの外注費が上がっているのに、見積の単価表が古いまま使われていました。

特急・夜間対応が無償

納期の短い案件で夜間に機械を回すことが多いのに、特急料金を付けている案件はごく一部でした。

営業担当ごとに値決めがばらばら

同じような仕様でも担当者によって粗利率が10ポイント以上違い、値引きの基準がありませんでした。

90日の打ち手(モデル)

DAY 1〜30日

案件の種類別に採算を出す

直近の受注を種類と部数帯に分け、用紙・外注加工・作業時間を割り当てて、採算の悪い種類と取引先を一覧にする。

DAY 31〜60日

単価表と特急料金を改定

最新の外注費で単価表を作り直し、納期別の特急料金を定めて取引先に案内する。

DAY 61〜90日

値決めの基準をそろえる

案件の種類ごとに目標粗利率を決め、それを下回る見積は承認制にする。

粗利率の変化(モデル)

BEFORE
25.8%
→
AFTER(想定)
29.1%
改善幅 +3.3pt / 年間の粗利増加 約2,864万円

計算:年商8.68億円 × 3.3ポイント = 約2,864万円(売上が同じと仮定した場合)。効果は企業の状況により異なります。

このケースから言えること

印刷会社の値上げは、単価表と料金ルールを全社で一本化する形で進めると、営業担当ごとのばらつきも同時に小さくできます。

粗利ドックの1日診断では、代表が1日現場に入り、社長・制作責任者・営業責任者・経理へのヒアリング、現場観察、見積や伝票の実物レビューを経て、仕事の種類別・取引先別にどこで粗利が漏れ、どれくらい取り戻せる余地があるかをA4・8ページの診断レポートにまとめます。

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よくある質問

特急料金を設けると、急ぎの仕事が他社に流れませんか?

急ぎの仕事に確実に応えられること自体が価値です。料金を明示することで、取引先も納期を計画しやすくなります。

営業担当が承認制を嫌がりませんか?

案件の種類ごとの目標粗利率を下回る見積だけを承認の対象にすれば、多くの案件はこれまでどおり担当者の判断で出せます。

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執筆:大越 隆行(T&Fアセットマネジメント株式会社 代表取締役兼CEO)Amazonで世界基準のオペレーションに携わった後、プライム上場企業の構造改革推進室で値上げ交渉・事業再生・撤退・M&Aを実行。粗利ドックの診断・伴走・再建はすべて本人が現場に入ります。プロフィール