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CASE ── 業種別モデルケース|印刷

印刷会社の粗利を削る用紙代と無償対応 ── 年商5.1億円・商業印刷の会社のモデルケース

公開 2026-10-30 | 執筆 大越 隆行

※本記事のケースは、印刷の中小企業でよく見られる状況をもとに構成したモデルケースです。特定の企業の事例ではなく、数値は説明のための例です。

この記事の要点
  1. 印刷会社で粗利が漏れやすいのは、①用紙値上げの未転嫁、②校正・修正の無償対応、③小ロット化で増えた刷版・段取りのコストです。
  2. 一件ごとの金額が小さく取引先が多いため、値上げも条件見直しも後回しになりやすい業種です。
  3. 仕事の種類別・取引先別に実原価を出して料金表を見直すと、年商5.1億円規模で粗利率3ポイント強、年間約1,669万円の改善余地があります。

モデルケースの会社

業種印刷
年商5.06億円
従業員36名
主な取引先地元企業・自治体・広告代理店(約140社)

起きていたこと

チラシ・パンフレット・冊子などの商業印刷が中心です。用紙価格は数回にわたって上がりましたが、長年の取引先には言い出しにくく、見積の単価はほぼ据え置き。粗利率は30%近くあったものが26.5%まで下がっていました。

診断で見えた「粗利の漏れ」

用紙値上げの半分以上が未転嫁

用紙の仕入単価は上がっているのに、見積で使う用紙単価の表が古いまま更新されていませんでした。

校正・修正が無償で何度も

3回目以降の校正や、入稿後のデータ修正を無償で対応しているケースが多く、デザイン・DTP担当の時間の約2割を占めていました。

小ロット化で一件あたりの手間が増加

部数は減っても刷版・色合わせ・断裁の手間は変わらず、小ロットの仕事ほど採算が悪化していました。

90日の打ち手(モデル)

DAY 1〜30日

仕事の種類別に採算を出す

直近の受注を、チラシ・冊子・名刺などの種類と部数帯に分け、用紙・刷版・作業時間を割り当てて採算を一覧にする。

DAY 31〜60日

料金表と校正ルールを改定

最新の用紙単価で料金表を作り直し、校正2回までは無料・3回目以降は有料などのルールを取引先に案内する。

DAY 61〜90日

小ロットの最低料金を設定

部数が少ない仕事に最低料金(基本料)を設け、赤字になる受注を減らす。

粗利率の変化(モデル)

BEFORE
26.5%
→
AFTER(想定)
29.8%
改善幅 +3.3pt / 年間の粗利増加 約1,669万円

計算:年商5.06億円 × 3.3ポイント = 約1,669万円(売上が同じと仮定した場合)。効果は企業の状況により異なります。

このケースから言えること

印刷会社の値上げは「全取引先に一斉に」ではなく、料金表の改定とルールの明文化で進めると角が立ちにくくなります。無償対応の時間を数字にすることが、社内の意識を変えるきっかけになります。

粗利ドックの1日診断では、代表が1日現場に入り、社長・制作責任者・経理へのヒアリング、現場観察、見積や伝票の実物レビューを経て、仕事の種類別・取引先別にどこで粗利が漏れ、どれくらい取り戻せる余地があるかをA4・8ページの診断レポートにまとめます。

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よくある質問

取引先が多すぎて、一社ずつ交渉できません。

料金表の改定として全体に案内し、売上の大きい取引先だけ個別に説明するのが現実的です。

校正を有料にすると、お客様が離れませんか?

回数の上限をあらかじめ示すことで、むしろ入稿データの質が上がり、双方の手間が減ることが多くあります。

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執筆:大越 隆行(T&Fアセットマネジメント株式会社 代表取締役兼CEO)Amazonで世界基準のオペレーションに携わった後、プライム上場企業の構造改革推進室で値上げ交渉・事業再生・撤退・M&Aを実行。粗利ドックの診断・伴走・再建はすべて本人が現場に入ります。プロフィール