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CASE ── 業種別モデルケース|樹脂成形(プラスチック製品製造)

成形機12台の小さな成形工場が原料高を乗り切る方法 ── 年商3.9億円のモデルケース

公開 2026-10-30 | 執筆 大越 隆行

※本記事のケースは、樹脂成形(プラスチック製品製造)の中小企業でよく見られる状況をもとに構成したモデルケースです。特定の企業の事例ではなく、数値は説明のための例です。

この記事の要点
  1. 成形機十数台の小さな成形工場では、①原料の値上がりを単価に乗せられていないこと、②小ロット化で増えた色替え・材料替えのロス、③最大顧客1社への依存が、粗利を削りやすい要因です。
  2. 最大顧客に売上の4割を頼っていると、原料が上がっても値上げを言い出しにくくなります。
  3. 品番別に原料比率とロスを出し、顧客ごとに条件を見直すと、年商3.9億円規模で粗利率3ポイント強、年間約1,212万円の改善余地があります。

モデルケースの会社

業種樹脂成形(プラスチック製品製造)
年商3.91億円
従業員24名
主な取引先日用品・雑貨メーカー(約13社。最大顧客で売上の約4割)

起きていたこと

日用品や雑貨の部品を、成形機12台で作っています。最大顧客1社で売上の約4割を占め、原料が値上がりしても単価の見直しは数年に一度。色の種類が増えて色替えも多くなり、粗利率は22%台から19.2%まで下がっていました。

診断で見えた「粗利の漏れ」

原料高が単価に入っていない

原料の仕入単価はこの数年で上がっていますが、最大顧客向けの単価は改定されておらず、原料比率の高い品番ほど利益が薄くなっていました。

色替え・材料替えのロス

1日に何度も色替えをしており、そのたびに出るパージ材(色・材料替えのときに捨てる樹脂)と立ち上げ不良が、売上の約2.5%に相当していました。

最大顧客への依存

最大顧客の発注に合わせて生産を組むため、ほかの顧客の仕事が細切れになり、段取りが増えていました。

90日の打ち手(モデル)

DAY 1〜30日

品番別に原料比率とロスを出す

品番ごとの原料使用量と最新の仕入単価、色替えの回数とパージ量を記録し、採算の悪い品番を特定する。

DAY 31〜60日

原料の上昇を示して単価を相談

原料価格の推移と品番別の原価を示し、最大顧客を含めて原料比率の高い品番から単価改定を相談する。

DAY 61〜90日

色替えの順番を組み直す

薄い色から濃い色へ順に流すなど生産の順番を決め、色替えの回数とパージ量を減らす。

粗利率の変化(モデル)

BEFORE
19.2%
→
AFTER(想定)
22.3%
改善幅 +3.1pt / 年間の粗利増加 約1,212万円

計算:年商3.91億円 × 3.1ポイント = 約1,212万円(売上が同じと仮定した場合)。効果は企業の状況により異なります。

このケースから言えること

大口の顧客に頼っている工場ほど、値上げの根拠を数字でそろえることが大切です。感覚ではなく品番ごとの原価で話すと、交渉が条件の話になります。

粗利ドックの1日診断では、代表が1日現場に入り、社長・製造責任者・経理担当へのヒアリング、現場観察、見積や伝票の実物レビューを経て、品番別・取引先別にどこで粗利が漏れ、どれくらい取り戻せる余地があるかをA4・8ページの診断レポートにまとめます。

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よくある質問

最大顧客に値上げを断られたら困ります。

一度に全品番ではなく、原料比率が高く赤字に近い品番から相談するのが現実的です。原価の根拠を示すことで、話し合いの土台ができます。

色替えの記録をつける余裕がありません。

1か月だけ、色替えの時刻とパージ量をメモするだけでも、改善の目安は十分に見えます。

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執筆:大越 隆行(T&Fアセットマネジメント株式会社 代表取締役兼CEO)Amazonで世界基準のオペレーションに携わった後、プライム上場企業の構造改革推進室で値上げ交渉・事業再生・撤退・M&Aを実行。粗利ドックの診断・伴走・再建はすべて本人が現場に入ります。プロフィール