なぜ売上はあるのに利益が残らないのか
利益が残らない最大の理由は、原価とコストが「全体の数字」でしか見えていないからです。決算書で見えるのは会社全体の粗利であって、どの商品・どの顧客で儲かり、どこで損をしているかはわかりません。
粗利とは、売上から原価(仕入や製造にかかった直接費)を引いた残りのことです。全体の粗利率が20%あっても、その中には粗利率40%の優良な取引と、ほとんど粗利の出ない取引が混ざっていることがほとんどです。
私がこれまで関わってきた構造改革でも、問題は「全体として赤字」ではなく「特定の領域で漏れている」ことがほとんどでした。全体平均を見ている限り、その穴は一生見えません。
利益の漏れはどこに潜んでいるか
利益の漏れは、商品別・顧客別・案件別のどこかに偏って潜んでいます。全体をならして見ると平均に埋もれてしまうため、まずは分解して「どこが足を引っ張っているか」を特定することが第一歩です。
たとえば年商8億円、全体の粗利率20%(粗利1億6000万円)の会社を考えます。売上の内訳がA商品群4億円・粗利率30%、B商品群4億円・粗利率10%だった場合、A群の粗利は1億2000万円、B群は4000万円です。B群は売上こそ半分あるのに、粗利ではA群の3分の1しか稼いでいません。
このとき「B群をやめればいい」と即断するのは危険ですが、少なくともB群に人手や在庫をどれだけ投じているかを見直す価値はあります。売上が大きいほど安心してしまう心理が、漏れを見えなくするのです。
- 商品・サービス別の粗利率
- 顧客・取引先別の粗利額
- 案件・現場ごとの採算
- 値引きや返品の多い領域
見えない固定費はどう捉えるか
見えない固定費とは、売上に直接ひもづかないのに毎月出ていく費用のことで、これが営業利益を静かに削ります。営業利益とは、粗利からこうした販売費・管理費(人件費、家賃、広告費など)を引いた、本業の儲けのことです。
たとえば粗利が月1300万円ある会社でも、固定費が月1250万円かかっていれば、営業利益はわずか50万円です。この状態で粗利がひと月100万円下がれば、簡単に赤字に転落します。固定費の重さを知らずに売上だけ追うと、増収なのに利益が消える現象が起きます。
厄介なのは、一つひとつは小さい雑費・サブスク・使われていないツール・惰性で続く外注などです。金額が小さいために誰もメスを入れず、積み重なって粗利を食っていきます。
原価の見える化は何から始めるか
原価の見える化は、まず売上を3〜5の区分に分けて、それぞれの粗利を出すことから始めます。完璧な原価計算を目指す必要はなく、ざっくりでよいので「どこで稼いでいるか」の輪郭をつかむことが目的です。
具体的には、過去半年〜1年の売上を商品群か顧客か案件のどれかで区分し、それぞれの直接原価を割り当てて粗利率を並べます。エクセルで表にするだけでも、粗利率の低い領域がはっきり浮かび上がってきます。
次に固定費の一覧を作り、売上がゼロでも出ていく金額を把握します。これで損益分岐点(利益がゼロになる売上高)が見えてきます。この2つを持つだけで、値引き要求を受けたときに「ここまでなら受けられる」という判断軸ができます。
明日から何をすればよいか
まずは直近の売上を3区分に分け、粗利率の表を一枚作ってみてください。紙とエクセルで十分です。おそらく「稼ぎ頭」と「足を引っ張っている領域」が想像と違っていることに気づくはずです。
同時に、毎月出ていく固定費を一覧にして、本当に必要かを一つずつ見直します。使っていないサブスクや惰性の外注を止めるだけでも、営業利益はそのぶん増えます。
ただ、身内だけで分解すると「これは必要経費だ」という思い込みが混ざり、客観的に見えなくなることがあります。手が止まったら、第三者の目で原価と粗利を分解してもらうのも一つの選択肢です。大事なのは、全体平均の裏に隠れた漏れを、まず自分の目で見える形にすることです。
※本コラムは、代表・大越の経験と考えにもとづく意見です。数値は説明のための計算例です。