粗利ドック代表コラム相談してみたい
粗利ドック›コラム›利益がどこで漏れているかわからない ── 原価の見える化で粗…
COLUMN ── 原価・コストの見える化

利益がどこで漏れているかわからない ── 原価の見える化で粗利の穴を見つける方法

公開 2026-11-02 | 執筆 大越 隆行
この記事の要点
  1. 利益が残らない会社の多くは、原価やコストが「どんぶり」で全体しか見えていない
  2. 商品・顧客・案件ごとに粗利を分解すると、赤字で売っている領域が見えてくる
  3. 見えない固定費や雑費の積み重ねが、営業利益を静かに削っている

なぜ売上はあるのに利益が残らないのか

利益が残らない最大の理由は、原価とコストが「全体の数字」でしか見えていないからです。決算書で見えるのは会社全体の粗利であって、どの商品・どの顧客で儲かり、どこで損をしているかはわかりません。

粗利とは、売上から原価(仕入や製造にかかった直接費)を引いた残りのことです。全体の粗利率が20%あっても、その中には粗利率40%の優良な取引と、ほとんど粗利の出ない取引が混ざっていることがほとんどです。

私がこれまで関わってきた構造改革でも、問題は「全体として赤字」ではなく「特定の領域で漏れている」ことがほとんどでした。全体平均を見ている限り、その穴は一生見えません。

利益の漏れはどこに潜んでいるか

利益の漏れは、商品別・顧客別・案件別のどこかに偏って潜んでいます。全体をならして見ると平均に埋もれてしまうため、まずは分解して「どこが足を引っ張っているか」を特定することが第一歩です。

たとえば年商8億円、全体の粗利率20%(粗利1億6000万円)の会社を考えます。売上の内訳がA商品群4億円・粗利率30%、B商品群4億円・粗利率10%だった場合、A群の粗利は1億2000万円、B群は4000万円です。B群は売上こそ半分あるのに、粗利ではA群の3分の1しか稼いでいません。

このとき「B群をやめればいい」と即断するのは危険ですが、少なくともB群に人手や在庫をどれだけ投じているかを見直す価値はあります。売上が大きいほど安心してしまう心理が、漏れを見えなくするのです。

見えない固定費はどう捉えるか

見えない固定費とは、売上に直接ひもづかないのに毎月出ていく費用のことで、これが営業利益を静かに削ります。営業利益とは、粗利からこうした販売費・管理費(人件費、家賃、広告費など)を引いた、本業の儲けのことです。

たとえば粗利が月1300万円ある会社でも、固定費が月1250万円かかっていれば、営業利益はわずか50万円です。この状態で粗利がひと月100万円下がれば、簡単に赤字に転落します。固定費の重さを知らずに売上だけ追うと、増収なのに利益が消える現象が起きます。

厄介なのは、一つひとつは小さい雑費・サブスク・使われていないツール・惰性で続く外注などです。金額が小さいために誰もメスを入れず、積み重なって粗利を食っていきます。

原価の見える化は何から始めるか

原価の見える化は、まず売上を3〜5の区分に分けて、それぞれの粗利を出すことから始めます。完璧な原価計算を目指す必要はなく、ざっくりでよいので「どこで稼いでいるか」の輪郭をつかむことが目的です。

具体的には、過去半年〜1年の売上を商品群か顧客か案件のどれかで区分し、それぞれの直接原価を割り当てて粗利率を並べます。エクセルで表にするだけでも、粗利率の低い領域がはっきり浮かび上がってきます。

次に固定費の一覧を作り、売上がゼロでも出ていく金額を把握します。これで損益分岐点(利益がゼロになる売上高)が見えてきます。この2つを持つだけで、値引き要求を受けたときに「ここまでなら受けられる」という判断軸ができます。

明日から何をすればよいか

まずは直近の売上を3区分に分け、粗利率の表を一枚作ってみてください。紙とエクセルで十分です。おそらく「稼ぎ頭」と「足を引っ張っている領域」が想像と違っていることに気づくはずです。

同時に、毎月出ていく固定費を一覧にして、本当に必要かを一つずつ見直します。使っていないサブスクや惰性の外注を止めるだけでも、営業利益はそのぶん増えます。

ただ、身内だけで分解すると「これは必要経費だ」という思い込みが混ざり、客観的に見えなくなることがあります。手が止まったら、第三者の目で原価と粗利を分解してもらうのも一つの選択肢です。大事なのは、全体平均の裏に隠れた漏れを、まず自分の目で見える形にすることです。

※本コラムは、代表・大越の経験と考えにもとづく意見です。数値は説明のための計算例です。

ARARI DOCK ── 1日診断
どこで粗利が漏れているか、いくら取り戻せるかを、1日で数字にします。

代表が1日現場に入り、品番別・取引先別の粗利をA4・8ページの診断レポートに。診断10万円(税抜)、診断だけで終了も可。成功報酬は増えた粗利額の20%にだけ連動します。

よくある質問

原価の見える化は何から始めればいいですか

まず売上を商品群や顧客など3〜5区分に分け、それぞれの粗利率を出すことから始めます。完璧な原価計算は不要で、ざっくりとした輪郭をつかむことが目的です。エクセル一枚で足を引っ張っている領域が見えてきます。

売上は伸びているのに利益が残らないのはなぜですか

粗利率の低い取引が増えているか、固定費が重いことが原因であることが多いです。売上が増えても粗利率10%の取引ばかりでは利益はほとんど残りません。商品別・顧客別に粗利を分解して、どこで稼いでいるかを確認してください。

細かい雑費まで見直す必要がありますか

あります。一つひとつは小さくても、サブスクや惰性の外注などが積み重なると営業利益を静かに削るからです。金額が小さく誰も止めないものほど、見直す価値があります。

関連コラム

価格転嫁の進め方がわからない社長へ ── 値上げを交渉に変える4ステップ銀行格付けはどこを見るか ── 粗利率と黒字が決算の信用力を決める理由値上げが怖い社長へ ── 粗利率を1%上げると利益はどう変わるか粗利と営業利益の違い ── なぜ改善指標は「粗利」なのかコラム一覧へ
執筆:大越 隆行(T&Fアセットマネジメント株式会社 代表取締役兼CEO)Amazonで世界基準のオペレーションに携わった後、プライム上場企業の構造改革推進室で値上げ交渉・事業再生・撤退・M&Aを実行。粗利ドックの診断・伴走・再建はすべて本人が現場に入ります。プロフィール