粗利率とは何か、なぜ「3%」が現実的な目標なのか
粗利率(売上総利益率)は、売上高から材料費・外注費・製造労務費などの売上原価を引いた「粗利」が売上に占める割合です。製造業の中小企業では、材料費比率が50%を超える会社も珍しくなく、粗利率は15〜25%程度に収まることが多くなります。
ここ数年の材料高で起きたのは、粗利率の「静かな低下」です。中小企業庁の調査(2026年3月)では、コスト上昇分のうち価格に転嫁できた割合は54.2%、原材料費で55.7%にとどまります。材料費比率55%の会社で材料費が20%上がり、転嫁できたのが55.7%なら、粗利率は4.9%分落ちる計算です(21.9%→17.0%)。
「3%」という目標は、この飲み込んだ4.9%のうち約6割を取り戻す下限値として置いています。全部戻す前提にはしませんが、3%なら90日で届く範囲です。
打ち手① 据え置き取引先の単価改定
もっとも大きく、もっとも早く効くのが単価改定です。ただし全社一律の値上げは失注を招きます。取引先ごとに「3年以上単価が据え置きの先」「材料高の後に一度も改定していない先」を洗い出し、どの先から、何%、どの根拠で伝えるかを設計します。
2026年1月に施行された中小受託取引適正化法(取適法)により、受託側からの価格協議の求めに応じない・説明しない・先延ばしにして一方的に代金を決めることは違反になりました。交渉の席に着かせる後ろ盾はできています。残るのは「何%を、どの根拠で言うか」です。
- 単価改定の根拠は、材料費・外注費・直課労務費を含めた実原価で作る
- 失っていい先と、絶対に失えない先を先に分ける
- 決裂した場合に空いた工数をどこへ振り替えるかまで試算しておく
打ち手② 赤字品番・SKUの是正
「材料費×係数」の見積では、どの品番が赤字かが見えません。品番(SKU)別に、材料費・外注費・直課労務費・段取り時間まで含めた実原価を割り当てると、売れば売るほど赤字になっている品番が必ず数品番は出てきます。
赤字品番の打ち手は、単価改定・ロットの見直し・セット化・最小受注量の設定・撤退のいずれかです。全体の粗利率を1%単位で押し上げる効果があり、単価改定と組み合わせると効きます。
打ち手③ 段取り・歩留まり・廃棄ロスの改善
価格が通る会社は、納期と品質が安定しています。逆に言えば、段取り替えの時間、仕掛品の滞留、歩留まりの悪さ、廃棄ロス、手戻りが残っている限り、値上げは通りにくくなります。
ここは現場の設計の問題で、人員削減ではありません。段取り替えをストップウォッチで実測し、歩留まりと廃棄ロスを品番別に数字にすると、粗利率0.5〜1%分の改善が現場だけで出ることがあります。
粗利率3%が営業利益に与えるインパクト
営業利益率=粗利率−販管費率です。粗利率の改善には追加コストがほぼかからないため、粗利率が3%上がれば営業利益率もそのまま3%上がります。
利益が薄い会社ほど、この倍率は大きくなります。売上を2倍にするには何年もかかりますが、粗利率を3%動かすのは90日で届く範囲です。
順番の決め方 ── まず「どこで粗利が漏れているか」を1日で数字にする
3つの打ち手のどれから始めるかは、会社ごとに違います。共通して必要なのは、品番別・取引先別の粗利が数字で見えていることです。粗利ドックは、代表が1日現場に入り、取り戻せる粗利を品番別・取引先別に診断レポートにまとめるところから始めます。