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COLUMN ── 粗利改善の実務

粗利率を上げる方法 ── 製造業の中小企業が90日で実行できる3つの打ち手

公開 2026-10-02 | 執筆 大越 隆行
この記事の要点
  1. 粗利率を上げる打ち手は、売上を増やすことではなく「価格」と「原価」の2つに集中します。
  2. 製造業の中小企業で効くのは、①据え置き取引先の単価改定、②赤字品番・SKUの是正、③段取り・歩留まり・廃棄ロスの改善の3つです。
  3. 粗利率が3%上がると、販管費が不変なら営業利益率も3%上がります。営業利益率1.8%の会社なら営業利益は約2.7倍です。

粗利率とは何か、なぜ「3%」が現実的な目標なのか

粗利率(売上総利益率)は、売上高から材料費・外注費・製造労務費などの売上原価を引いた「粗利」が売上に占める割合です。製造業の中小企業では、材料費比率が50%を超える会社も珍しくなく、粗利率は15〜25%程度に収まることが多くなります。

ここ数年の材料高で起きたのは、粗利率の「静かな低下」です。中小企業庁の調査(2026年3月)では、コスト上昇分のうち価格に転嫁できた割合は54.2%、原材料費で55.7%にとどまります。材料費比率55%の会社で材料費が20%上がり、転嫁できたのが55.7%なら、粗利率は4.9%分落ちる計算です(21.9%→17.0%)。

「3%」という目標は、この飲み込んだ4.9%のうち約6割を取り戻す下限値として置いています。全部戻す前提にはしませんが、3%なら90日で届く範囲です。

打ち手① 据え置き取引先の単価改定

もっとも大きく、もっとも早く効くのが単価改定です。ただし全社一律の値上げは失注を招きます。取引先ごとに「3年以上単価が据え置きの先」「材料高の後に一度も改定していない先」を洗い出し、どの先から、何%、どの根拠で伝えるかを設計します。

2026年1月に施行された中小受託取引適正化法(取適法)により、受託側からの価格協議の求めに応じない・説明しない・先延ばしにして一方的に代金を決めることは違反になりました。交渉の席に着かせる後ろ盾はできています。残るのは「何%を、どの根拠で言うか」です。

打ち手② 赤字品番・SKUの是正

「材料費×係数」の見積では、どの品番が赤字かが見えません。品番(SKU)別に、材料費・外注費・直課労務費・段取り時間まで含めた実原価を割り当てると、売れば売るほど赤字になっている品番が必ず数品番は出てきます。

赤字品番の打ち手は、単価改定・ロットの見直し・セット化・最小受注量の設定・撤退のいずれかです。全体の粗利率を1%単位で押し上げる効果があり、単価改定と組み合わせると効きます。

打ち手③ 段取り・歩留まり・廃棄ロスの改善

価格が通る会社は、納期と品質が安定しています。逆に言えば、段取り替えの時間、仕掛品の滞留、歩留まりの悪さ、廃棄ロス、手戻りが残っている限り、値上げは通りにくくなります。

ここは現場の設計の問題で、人員削減ではありません。段取り替えをストップウォッチで実測し、歩留まりと廃棄ロスを品番別に数字にすると、粗利率0.5〜1%分の改善が現場だけで出ることがあります。

粗利率3%が営業利益に与えるインパクト

営業利益率=粗利率−販管費率です。粗利率の改善には追加コストがほぼかからないため、粗利率が3%上がれば営業利益率もそのまま3%上がります。

年商8億円・粗利率17%・販管費率15.2%のモデル企業:営業利益率1.8%(1,440万円)→ 粗利率20%で営業利益率4.8%(3,840万円)=約2.7倍。

利益が薄い会社ほど、この倍率は大きくなります。売上を2倍にするには何年もかかりますが、粗利率を3%動かすのは90日で届く範囲です。

順番の決め方 ── まず「どこで粗利が漏れているか」を1日で数字にする

3つの打ち手のどれから始めるかは、会社ごとに違います。共通して必要なのは、品番別・取引先別の粗利が数字で見えていることです。粗利ドックは、代表が1日現場に入り、取り戻せる粗利を品番別・取引先別に診断レポートにまとめるところから始めます。

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よくある質問

粗利率の目安は製造業でどれくらいですか?

業種・材料費比率によって幅がありますが、材料費比率50%超の金属加工・部品製造では15〜25%程度が多く見られます。重要なのは業界平均との比較より、材料高の前と比べて自社の粗利率が何%落ちたかです。

粗利率を上げるのに人員削減は必要ですか?

必要ありません。労務費が業種の中央値並みであれば、人が多すぎて赤字なのではなく、作っているものの値段が低い構造です。打ち手は価格とオペレーションです。

90日で本当に粗利率は動きますか?

粗利は受注した瞬間に決まるため、単価改定が通った受注から週次で粗利率の変化を確認できます。営業利益と違い、決算を待たずに検証できるのが粗利を指標にする理由です。

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執筆:大越 隆行(T&Fアセットマネジメント株式会社 代表取締役兼CEO)Amazonで世界基準のオペレーションに携わった後、プライム上場企業の構造改革推進室で値上げ交渉・事業再生・撤退・M&Aを実行。粗利ドックの診断・伴走・再建はすべて本人が現場に入ります。プロフィール