下請法から取適法へ ── 名称と考え方の変化
「下請」という言葉が上下関係を連想させることから、法律名は「中小受託取引適正化法」に、当事者の呼び方も「親事業者・下請事業者」から「委託事業者・中小受託事業者」に改められました。目的は、価格転嫁が進みにくい中小企業の取引環境を是正することです。
変更点① 協議に応じない一方的な代金決定の禁止
受託側から価格協議を求められたのに、応じない・必要な説明をしない・先延ばしにして代金を一方的に決めることが違反になりました。「話を聞いてもらえない」こと自体が、相手の違反です。
これにより、受託側は「協議を求める権利」を実務上の後ろ盾として使えるようになりました。ただし、法律が守るのは「交渉の場に着かせる」ところまでです。何%を、どの根拠で言うかは、自社の数字で示す必要があります。
変更点② 従業員数基準の新設
従来の資本金基準に加えて、従業員数基準が追加されました。製造委託等では300人、役務提供委託等では100人が目安です。資本金を小さくして規制を逃れる形が効きにくくなり、年商3〜20億円規模の中小・中堅企業の多くが保護される側に入ります。
変更点③ 通報先の拡大と不利益取扱いの禁止
公正取引委員会・中小企業庁に加え、業界を所管する省庁にも通報できるようになりました。通報を理由にした取引停止などの不利益取扱いは禁止されています。
受託側の中小企業が、いますべきこと
- 取引先ごとの単価の最終改定時期と粗利率を一覧にする
- 品番別の実原価(材料費・外注費・直課労務費・段取り)を出し、原価割れ品番を特定する
- 協議を求める文面と、改定幅・適用時期・根拠を用意する
粗利ドックは、この「協議の席で言う数字」を1日の現場診断で作ります。取適法施行後の値上げ交渉を、根拠のある協議にするための出発点です。
出典
公正取引委員会・中小企業庁「中小受託取引適正化法(取適法)」、政府広報オンライン。法解釈は各機関の資料をご確認ください。本記事は受託側の実務の観点で要点を整理したものです。