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COLUMN ── 赤字の全面見直し

赤字の原因がわからない ── なぜ身内の目では分解できないのかを第三者視点で考える

公開 2026-11-01 | 執筆 大越 隆行
この記事の要点
  1. 赤字の原因が社内で特定できないのは、身内の目に死角と利害があるからだと考えています
  2. 赤字は会社単位ではなく、商品・顧客・事業の単位に分解して初めて正体が見える
  3. 計算例で粗利を分解し、何がどう悪さをしているかを数字で切り分ける手順を示します

赤字の原因が社内でわからないのはなぜか

結論から言えば、身内の目には死角と利害があるからだと私は考えています。赤字が続いても原因が特定できない会社は珍しくありませんが、その多くは分析力の問題ではなく、立場の問題です。

社長は創業以来の思い入れがある商品を切りにくく、営業担当は自分が取ってきた顧客を不採算とは言いにくい。製造も「うちの工程は問題ない」と考えがちです。それぞれが悪意なく「自分の正しさ」を守る位置に立っているため、全体の赤字がどこで生まれているかが宙に浮きます。

赤字とは、売上から費用を引いた結果がマイナスの状態のことです。ところが会社全体の損益だけを見ていると、黒字の部門が赤字の部門を覆い隠し、何がどう悪さをしているのかが見えなくなります。

赤字はどの単位に分解して見るべきか

赤字は会社単位ではなく、商品・顧客・事業の単位まで分解して見るべきだと考えています。全社で赤字でも、すべてが赤字なわけではありません。たいていは一部の不採算が全体を押し下げています。

まず見てほしいのが粗利です。粗利とは、売上から原価(仕入や製造にかかった直接の費用)を引いた、商いそのものが生む利益のことです。この粗利を商品別・顧客別に並べると、どこで稼ぎ、どこで漏らしているかが浮かび上がります。

たとえば年商8億円、全社の営業利益がマイナス2,000万円の会社があるとします。商品群をA・B・Cに分けて粗利を出したら、Aは粗利1億円、Bは4,000万円、Cは粗利がほぼゼロ、という具合に差が出ることがあります。全社の赤字という一枚の絵では見えなかった正体が、分解すると急に輪郭を持ちます。

数字で赤字を切り分けるとどう見えるか

数字で切り分けると、赤字の正体は「売れていない」ではなく「売るほど損をしている」場合が多いと気づきます。ここで役立つのが限界利益という考え方です。限界利益とは、売上から、売上に比例して増える費用(変動費)を引いた金額のことです。

たとえばある商品の売上が月1,000万円、変動費が900万円なら、限界利益は100万円です。この商品に配賦される固定費(家賃や人件費など売上に関係なく出ていく費用)が月150万円なら、差し引き月50万円の赤字。売れば売るほど固定費を回収しきれず、沈んでいきます。

一方、限界利益が固定費を上回っていれば、その商品は残すべき候補です。損益分岐点、つまり利益がちょうどゼロになる売上高を超えているかどうかで、残す・直す・やめるの判断材料が揃っていきます。感情ではなく、この順番で数字を置くことが第一歩です。

なぜ第三者の目が必要なのか

第三者の目が必要なのは、分解の精度を上げるためではなく、分解した結果から目をそらさないためだと考えています。社内で数字を出せても、「この顧客は将来伸びる」「この商品は看板だから」と、都合のよい物語を添えてしまいがちです。

私自身、構造改革や事業の撤退に携わってきて痛感したのは、数字そのものより「その数字をどう解釈するか」で結論が変わるということです。身内はどうしても過去の経緯や人間関係を背負います。利害のない第三者は、同じ数字を見ても「この事業は限界利益がマイナスだから、このままでは続けられません」と言い切れます。

もちろん第三者が正しいとは限りませんし、現場を知る社内の肌感覚にも価値があります。大事なのは、両方を突き合わせて判断することです。片方だけでは、見たくない赤字ほど温存されやすいと感じています。

社長が明日から何をすればよいか

明日からできるのは、全社の損益を一旦脇に置き、商品別・顧客別に粗利を並べる作業です。完璧な原価計算でなくてもかまいません。ざっくりでいいので、どこが黒でどこが赤かを一枚の表にすることが出発点です。

並べたら、赤字の項目について「変動費すら回収できていないか」「固定費まで含めて赤か」を切り分けます。前者は早急に手を打つべき対象、後者は条件次第で残せる対象です。この二つを混ぜて議論すると、話が感情論に流れます。

そして、出てきた表を一度、利害のない第三者に見てもらうことをおすすめします。社内では言いにくい結論を、数字に語らせるためです。赤字の正体が見えれば、やめる・直す・値上げするといった次の一手も具体的になります。

※本コラムは、代表・大越の経験と考えにもとづく意見です。数値は説明のための計算例です。

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よくある質問

赤字の原因が何年も特定できません。どこから手をつければいいですか

まず会社全体の損益ではなく、商品別・顧客別に粗利を分解することから始めてください。全体の赤字は黒字部門が赤字部門を覆い隠すため、分解しないと正体が見えません。ざっくりした区分でも、黒と赤の輪郭は十分つかめます。

赤字の商品はすぐやめるべきですか

すぐやめるべきとは限りません。売上に比例する変動費すら回収できていない商品は早急に見直す対象ですが、変動費は回収できていて固定費までで赤字の商品は、値上げや数量次第で残せる場合があります。まず限界利益がプラスかマイナスかで切り分けてください。

なぜ社内ではなく第三者に赤字を見てもらうのですか

第三者は過去の経緯や人間関係といった利害を背負わないため、数字から目をそらさずに判断できるからです。社内では「看板商品だから」といった物語が加わりやすく、見たくない赤字ほど温存されがちです。社内の肌感覚と第三者の視点を突き合わせて判断するのが有効だと考えています。

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執筆:大越 隆行(T&Fアセットマネジメント株式会社 代表取締役兼CEO)Amazonで世界基準のオペレーションに携わった後、プライム上場企業の構造改革推進室で値上げ交渉・事業再生・撤退・M&Aを実行。粗利ドックの診断・伴走・再建はすべて本人が現場に入ります。プロフィール