赤字の原因が社内でわからないのはなぜか
結論から言えば、身内の目には死角と利害があるからだと私は考えています。赤字が続いても原因が特定できない会社は珍しくありませんが、その多くは分析力の問題ではなく、立場の問題です。
社長は創業以来の思い入れがある商品を切りにくく、営業担当は自分が取ってきた顧客を不採算とは言いにくい。製造も「うちの工程は問題ない」と考えがちです。それぞれが悪意なく「自分の正しさ」を守る位置に立っているため、全体の赤字がどこで生まれているかが宙に浮きます。
赤字とは、売上から費用を引いた結果がマイナスの状態のことです。ところが会社全体の損益だけを見ていると、黒字の部門が赤字の部門を覆い隠し、何がどう悪さをしているのかが見えなくなります。
赤字はどの単位に分解して見るべきか
赤字は会社単位ではなく、商品・顧客・事業の単位まで分解して見るべきだと考えています。全社で赤字でも、すべてが赤字なわけではありません。たいていは一部の不採算が全体を押し下げています。
まず見てほしいのが粗利です。粗利とは、売上から原価(仕入や製造にかかった直接の費用)を引いた、商いそのものが生む利益のことです。この粗利を商品別・顧客別に並べると、どこで稼ぎ、どこで漏らしているかが浮かび上がります。
たとえば年商8億円、全社の営業利益がマイナス2,000万円の会社があるとします。商品群をA・B・Cに分けて粗利を出したら、Aは粗利1億円、Bは4,000万円、Cは粗利がほぼゼロ、という具合に差が出ることがあります。全社の赤字という一枚の絵では見えなかった正体が、分解すると急に輪郭を持ちます。
数字で赤字を切り分けるとどう見えるか
数字で切り分けると、赤字の正体は「売れていない」ではなく「売るほど損をしている」場合が多いと気づきます。ここで役立つのが限界利益という考え方です。限界利益とは、売上から、売上に比例して増える費用(変動費)を引いた金額のことです。
たとえばある商品の売上が月1,000万円、変動費が900万円なら、限界利益は100万円です。この商品に配賦される固定費(家賃や人件費など売上に関係なく出ていく費用)が月150万円なら、差し引き月50万円の赤字。売れば売るほど固定費を回収しきれず、沈んでいきます。
一方、限界利益が固定費を上回っていれば、その商品は残すべき候補です。損益分岐点、つまり利益がちょうどゼロになる売上高を超えているかどうかで、残す・直す・やめるの判断材料が揃っていきます。感情ではなく、この順番で数字を置くことが第一歩です。
なぜ第三者の目が必要なのか
第三者の目が必要なのは、分解の精度を上げるためではなく、分解した結果から目をそらさないためだと考えています。社内で数字を出せても、「この顧客は将来伸びる」「この商品は看板だから」と、都合のよい物語を添えてしまいがちです。
私自身、構造改革や事業の撤退に携わってきて痛感したのは、数字そのものより「その数字をどう解釈するか」で結論が変わるということです。身内はどうしても過去の経緯や人間関係を背負います。利害のない第三者は、同じ数字を見ても「この事業は限界利益がマイナスだから、このままでは続けられません」と言い切れます。
もちろん第三者が正しいとは限りませんし、現場を知る社内の肌感覚にも価値があります。大事なのは、両方を突き合わせて判断することです。片方だけでは、見たくない赤字ほど温存されやすいと感じています。
社長が明日から何をすればよいか
明日からできるのは、全社の損益を一旦脇に置き、商品別・顧客別に粗利を並べる作業です。完璧な原価計算でなくてもかまいません。ざっくりでいいので、どこが黒でどこが赤かを一枚の表にすることが出発点です。
並べたら、赤字の項目について「変動費すら回収できていないか」「固定費まで含めて赤か」を切り分けます。前者は早急に手を打つべき対象、後者は条件次第で残せる対象です。この二つを混ぜて議論すると、話が感情論に流れます。
そして、出てきた表を一度、利害のない第三者に見てもらうことをおすすめします。社内では言いにくい結論を、数字に語らせるためです。赤字の正体が見えれば、やめる・直す・値上げするといった次の一手も具体的になります。
※本コラムは、代表・大越の経験と考えにもとづく意見です。数値は説明のための計算例です。