「経営状態が良い」を感覚で語っていないか
社長とお話ししていると、「うちは調子がいい」「最近は厳しい」という言葉をよく聞きます。しかし、その根拠を尋ねると、たいていは売上や受注量の話に偏っています。売上が増えていれば調子がいい、という感覚です。
私はこれを危ういと考えています。売上が増えても、値引きが増えたり原価が上がったりすれば、手元に残る利益は減ります。経営状態が良いかどうかは、感覚ではなく数字の形で定義すべきだというのが私の持論です。
ここで言う収益性とは、売上からどれだけ利益を生み出せているかの度合いです。これを担保する、つまり安定して確保し続けられる状態こそが、経営状態が良いということだと私は考えています。
収益性は3つの数字で見る
私が経営状態を確認するとき、まず見るのは3つの数字です。粗利率、営業利益率、そして現金の厚みです。この3点がそろって初めて、健全だと言えます。
粗利とは、売上から仕入れや製造にかかった原価を引いた、本業の儲けの源です。営業利益とは、その粗利から人件費や家賃などの経費を引いて残る、本業そのものの利益を指します。どちらも率(売上に対する割合)で見ると、会社の体質がわかります。
- 粗利率 ── 商品やサービスに価格競争力と値決めの余地があるか
- 営業利益率 ── 本業の仕組みで利益が出ているか
- 現金の厚み ── 利益が実際のお金として手元に残っているか
計算例で見る「同じ売上でも違う経営状態」
たとえば年商8億円の会社を2つのパターンで比べてみます。パターン1は粗利率20%で粗利1億6000万円、経費が1億4000万円かかり、営業利益は2000万円です。パターン2は粗利率30%で粗利2億4000万円、経費が同じく1億4000万円で、営業利益は1億円になります。
売上は同じ8億円でも、残る営業利益は5倍の差です。もし来年、原材料の高騰で原価が一律に上がり、粗利率が5ポイント下がったとします。パターン1は粗利率15%で粗利1億2000万円となり、経費1億4000万円を引くと2000万円の赤字に転落します。
一方のパターン2は粗利率25%で粗利2億円、営業利益6000万円を維持できます。同じ逆風を受けても、収益性に厚みがある会社は耐えられる。これが「収益性を担保する」ことの意味だと私は考えています。
収益性を担保するとは「意図せず下がらない仕組み」
収益性の担保で大事なのは、高い利益率を一時的に出すことではありません。利益率が、気づかないうちにじわじわ下がっていかない仕組みを持つことです。値引きが現場の判断で常態化していないか、原価上昇を価格に反映できる関係を取引先と築けているか、という点です。
たとえば営業現場で「競合に合わせて5%引いておきました」という対応が月に何件も積み上がれば、全社の粗利率は静かに削られていきます。粗利率が1ポイント下がるだけで、先ほどの年商8億円の例なら粗利は800万円減ります。これは社長が意識しないところで起きる、最も気づきにくい利益の流出です。
だからこそ、誰がどんな理由で利益率を動かしているのかを、数字で見える状態にしておくことが収益性の担保につながります。
明日から確認する3つのこと
まず、直近1年の月ごとの粗利率を並べてみてください。右肩下がりになっていないか、特定の月に大きく落ちていないかを確認します。下がっている月があれば、何が起きたのかを必ず振り返ることです。
次に、営業利益率を業界の肌感覚と比べ、低いなら経費と原価のどちらが重いのかを分けて見ます。最後に、営業利益が現金として手元に残っているか、利益は出ているのに現金が増えていないという状態になっていないかを確認します。
こうした分解は、身内だけでやると「いつも通り」という思い込みが入りがちです。もし自社だけでは客観的に見きれないと感じたら、第三者の目で数字を分解してもらうのも一つの選択肢だと思います。まずは手元の試算表を開き、3つの数字を並べるところから始めてみてください。
※本コラムは、代表・大越の経験と考えにもとづく意見です。数値は説明のための計算例です。