粗利ドック相談してみたい
粗利ドック›コラム›不採算事業を放置すると融資で困る ── 黒字化を急ぐべき3つ…
COLUMN ── 不採算事業の黒字化

不採算事業を放置すると融資で困る ── 黒字化を急ぐべき3つの理由

公開 2026-10-31 | 執筆 大越 隆行
この記事の要点
  1. 「全体では黒字」でも、不採算の事業や取引が利益を食っていれば、会社の稼ぐ力は弱く見えます。
  2. 借入のある会社にとって、決算の利益は、次の融資の条件や金利を左右する材料になります。
  3. 不採算を黒字化する打ち手は、値上げ、やり方の見直し、縮小・撤退の3つ。早く手を付けるほど選択肢が多く残ります。

「全体では黒字だから」が一番危ない

複数の事業や取引を抱える中小企業では、一部が赤字でも、ほかの黒字で埋まって全体は黒字、ということがよくあります。社長としても「全体で回っているなら」と後回しにしがちです。

しかし私は、この状態こそ早めに手を打つべきだと考えています。黒字の事業が稼いだ利益を、不採算の事業が毎年食べている状態だからです。不採算がなければ、その利益は会社に残り、設備や人への投資に回せたはずです。

理由1:決算の利益は、融資の条件を左右する

借入のある会社にとって、決算書は銀行に会社の実力を伝える一番の資料です。銀行は、売上の大きさだけでなく、営業利益(本業で稼いだ利益)がどれだけ出ているか、借入をどれくらいの年数で返せるかを見ています。

たとえば年商10億円の会社で、ある事業が毎年2,000万円の赤字を出しているとします。この赤字がなくなれば、営業利益はそのまま2,000万円増えます。営業利益が増えれば返済の余力が大きく見え、次の融資の金額や金利、保証の条件で有利に働く可能性が高まると私は考えています。

逆に、赤字の事業を抱えたまま利益が年々細っていくと、本当に資金が必要なときに、思うように借りられないという事態になりかねません。

理由2:赤字は、時間がたつほど直しにくくなる

不採算の取引は、放置するほど直しにくくなります。単価を長く据え置くほど、値上げの幅が大きくなり、交渉が難しくなるからです。人やノウハウもその事業に固定されていき、動かしにくくなります。

赤字に気づいた時点で手を付ければ、値上げや、やり方の見直しで黒字化できる余地が残っています。数年たってからでは、撤退しか選べなくなっていることもあります。

理由3:不採算は、会社全体の判断を鈍らせる

赤字の事業があると、社長の時間と気持ちがそこに取られます。毎月の会議で赤字の説明を聞き、手当てを考えることに追われ、伸ばすべき事業に目が向かなくなります。

さらに、社員は「赤字でも続けてよい」というメッセージとして受け取ります。利益に対する感度が会社全体で下がっていくことが、私は一番怖いと思っています。

黒字化の打ち手は3つ

不採算を黒字化する打ち手は、大きく分けて3つしかありません。どれを選ぶかは、取引先との関係と、その事業の将来性で決めます。

銀行には「赤字の理由」と「直し方」をセットで伝える

不採算の事業があること自体は、珍しいことではありません。銀行が気にするのは、社長がその赤字を把握しているか、そして直す道筋を持っているか、だと私は考えています。

赤字の原因を数字で説明し、値上げ、やり方の見直し、縮小のどれをいつまでに行うかを示せれば、銀行との対話は前向きなものになります。反対に、赤字の中身を聞かれて答えられないと、会社全体の管理に不安を持たれてしまいます。

決算の数字が整うまでには時間がかかります。だからこそ、次の決算期を待たずに、いまから手を付けておくことが大切です。

まずは、どこがいくら赤字かを正確に知る

打ち手を選ぶ前に必要なのは、どの事業・どの取引が、いくら赤字なのかを正確に知ることです。ところが、共通でかかっている人件費や経費をどう割り振るかで、赤字の大きさは大きく変わります。社内で計算すると、どうしても都合のよい割り振りになりがちです。

融資を受けている、あるいはこれから受ける予定のある社長ほど、早めに不採算の中身を分解しておくことをおすすめします。必要であれば、利害関係のない第三者に客観的に評価してもらうことも、ひとつの手だと思います。

※本コラムは、代表・大越の経験と考えにもとづく意見です。数値は説明のための計算例です。

ARARI DOCK ── 1日診断
どこで粗利が漏れているか、いくら取り戻せるかを、1日で数字にします。

代表が1日現場に入り、品番別・取引先別の粗利をA4・8ページの診断レポートに。診断10万円(税抜)、診断だけで終了も可。成功報酬は増えた粗利額の20%にだけ連動します。

よくある質問

赤字の事業があると、融資は受けられませんか?

一概にそうとは言えません。ただ、赤字の原因と黒字化の計画を説明できるかどうかで、銀行の受け止め方は大きく変わると私は考えています。

撤退すると、取引先との関係が悪くなりませんか?

いきなりの撤退は関係を損ねることがあります。まず値上げや条件の見直しを提案し、それでも合わない場合に、時間をかけて縮小していく進め方をおすすめします。

どの事業が赤字か、社内で分かっていない場合は?

事業別・取引先別に、売上と直接かかった費用を分けることから始めます。共通費の割り振りは後からでも構いません。まずは直接の利益を見える化してください。

関連コラム

値上げが怖い社長へ ── 粗利率を1%上げると利益はどう変わるか赤字の原因がわからない ── なぜ身内の目では分解できないのかを第三者視点で考える収益性を担保するとは何か ── 「経営状態が良い会社」を数字で定義する粗利と営業利益の違い ── なぜ改善指標は「粗利」なのかコラム一覧へ
執筆:大越 隆行(T&Fアセットマネジメント株式会社 代表取締役兼CEO)Amazonで世界基準のオペレーションに携わった後、プライム上場企業の構造改革推進室で値上げ交渉・事業再生・撤退・M&Aを実行。粗利ドックの診断・伴走・再建はすべて本人が現場に入ります。プロフィール