「全体では黒字だから」が一番危ない
複数の事業や取引を抱える中小企業では、一部が赤字でも、ほかの黒字で埋まって全体は黒字、ということがよくあります。社長としても「全体で回っているなら」と後回しにしがちです。
しかし私は、この状態こそ早めに手を打つべきだと考えています。黒字の事業が稼いだ利益を、不採算の事業が毎年食べている状態だからです。不採算がなければ、その利益は会社に残り、設備や人への投資に回せたはずです。
理由1:決算の利益は、融資の条件を左右する
借入のある会社にとって、決算書は銀行に会社の実力を伝える一番の資料です。銀行は、売上の大きさだけでなく、営業利益(本業で稼いだ利益)がどれだけ出ているか、借入をどれくらいの年数で返せるかを見ています。
たとえば年商10億円の会社で、ある事業が毎年2,000万円の赤字を出しているとします。この赤字がなくなれば、営業利益はそのまま2,000万円増えます。営業利益が増えれば返済の余力が大きく見え、次の融資の金額や金利、保証の条件で有利に働く可能性が高まると私は考えています。
逆に、赤字の事業を抱えたまま利益が年々細っていくと、本当に資金が必要なときに、思うように借りられないという事態になりかねません。
理由2:赤字は、時間がたつほど直しにくくなる
不採算の取引は、放置するほど直しにくくなります。単価を長く据え置くほど、値上げの幅が大きくなり、交渉が難しくなるからです。人やノウハウもその事業に固定されていき、動かしにくくなります。
赤字に気づいた時点で手を付ければ、値上げや、やり方の見直しで黒字化できる余地が残っています。数年たってからでは、撤退しか選べなくなっていることもあります。
理由3:不採算は、会社全体の判断を鈍らせる
赤字の事業があると、社長の時間と気持ちがそこに取られます。毎月の会議で赤字の説明を聞き、手当てを考えることに追われ、伸ばすべき事業に目が向かなくなります。
さらに、社員は「赤字でも続けてよい」というメッセージとして受け取ります。利益に対する感度が会社全体で下がっていくことが、私は一番怖いと思っています。
黒字化の打ち手は3つ
不採算を黒字化する打ち手は、大きく分けて3つしかありません。どれを選ぶかは、取引先との関係と、その事業の将来性で決めます。
- 値上げ:根拠を示して、順番と幅を決めて単価を改定する
- やり方の見直し:段取り、外注、物流、人の配置など、原価そのものを下げる
- 縮小・撤退:将来性が乏しい事業や取引は、計画的に手放す
銀行には「赤字の理由」と「直し方」をセットで伝える
不採算の事業があること自体は、珍しいことではありません。銀行が気にするのは、社長がその赤字を把握しているか、そして直す道筋を持っているか、だと私は考えています。
赤字の原因を数字で説明し、値上げ、やり方の見直し、縮小のどれをいつまでに行うかを示せれば、銀行との対話は前向きなものになります。反対に、赤字の中身を聞かれて答えられないと、会社全体の管理に不安を持たれてしまいます。
決算の数字が整うまでには時間がかかります。だからこそ、次の決算期を待たずに、いまから手を付けておくことが大切です。
まずは、どこがいくら赤字かを正確に知る
打ち手を選ぶ前に必要なのは、どの事業・どの取引が、いくら赤字なのかを正確に知ることです。ところが、共通でかかっている人件費や経費をどう割り振るかで、赤字の大きさは大きく変わります。社内で計算すると、どうしても都合のよい割り振りになりがちです。
融資を受けている、あるいはこれから受ける予定のある社長ほど、早めに不採算の中身を分解しておくことをおすすめします。必要であれば、利害関係のない第三者に客観的に評価してもらうことも、ひとつの手だと思います。
※本コラムは、代表・大越の経験と考えにもとづく意見です。数値は説明のための計算例です。