粗利率と粗利額は、何がどう違うのか
結論から言えば、粗利率は「商売の質」、粗利額は「会社の体力」を表す別々の指標です。同じ粗利という言葉でも、意味するものはまったく違います。
粗利とは、売上から売上原価を引いた儲けのことです。このうち粗利率とは、売上に対して粗利が何パーセント残るかを示す割合のことで、1件あたりの商売の効率を表します。一方の粗利額とは、粗利を金額そのもので見たもので、固定費を払ったあとに会社に残る体力を表します。
私はAmazonでのオペレーションでもM&Aや事業再生の現場でも、この二つを必ず分けて見てきました。率だけを追う社長も、額だけを追う社長も、どちらも判断を誤りやすいからです。
なぜ率が高いのに利益が残らないのか
粗利率が高くても粗利額が小さければ、固定費を払いきれず利益は残りません。率は効率であって、金額そのものではないからです。
たとえば粗利率40%の商品でも、年間の売上が5000万円なら粗利額は2000万円です。もし家賃や人件費などの固定費が年2200万円かかっていれば、営業利益は200万円の赤字になります。営業利益とは、粗利額から固定費を引いた、本業で稼いだ利益のことです。
逆に粗利率が25%でも、売上が1億円あれば粗利額は2500万円となり、同じ固定費なら300万円の黒字です。率が低い商売のほうが会社を支えている、という逆転はよく起こります。だからこそ、率だけを見て「この事業は効率が良い」と判断するのは危ういのです。
なぜ額だけを見ても判断を誤るのか
粗利額だけを見ると、効率の悪い商売を無自覚に増やしてしまう危険があります。額は売上を伸ばせば自然に増えるため、質の悪化が隠れるからです。
たとえば粗利率10%の仕事を大量に取れば、粗利額は増えます。しかし値引きや追加対応で原価が膨らめば、手間ばかりかかって利益は薄いままです。額が増えたのに資金繰りは楽にならない、という状態はここから生まれます。
額は「どれだけ稼いだか」、率は「どれだけ効率よく稼いだか」。額が増えているときこそ、その裏で率が下がっていないかを合わせて確認する習慣が要ります。
率と額をどう組み合わせて見るか
率と額は、商品別・顧客別に並べて見ると判断材料になります。一つの表に両方を置くことで、伸ばすべきものと見直すべきものが見えてくるからです。
具体的には、商品や顧客を縦に並べ、横に売上・粗利率・粗利額の三つを置いた一覧を作ります。そのうえで、次の四つの型に分けて考えると整理しやすくなります。
- 率も額も高い:会社の柱。最優先で守り、伸ばす
- 率は高いが額が小さい:単価か数量を増やせないか検討する
- 率は低いが額が大きい:固定費を支える土台。率の改善余地を探る
- 率も額も低い:手間と利益が見合うか、取引条件を見直す
社長は明日から何を見ればよいか
まずは直近1年の売上を、主要な商品か顧客の5つ程度に分け、それぞれの粗利率と粗利額を紙に書き出してみてください。合計だけで見ていた粗利が、どこから来てどこで薄くなっているかが見えてきます。
そのうえで、額は大きいのに率が極端に低いものがあれば、値上げや条件変更の候補です。率は高いのに額が小さいものは、販売量を増やす余地がないかを考えます。この二つの軸を行き来するだけで、翌月からの打ち手が具体的になります。
ただ、自社の数字を自分で分解すると、どうしても「このお客様は付き合いが長いから」と情が入ります。率と額の切り分けが難しいと感じたら、一度第三者の目で分解してもらうのも一つの選択肢です。
※本コラムは、代表・大越の経験と考えにもとづく意見です。数値は説明のための計算例です。